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第19回 相続対策のはじめの一歩「財産管理」後編

2023.06.08

こんにちは!相続未来図の志田です。

今回は財産管理の後編、
「民事信託」についてお話ししていきます。

【高齢者の財産管理制度】
(1)家族の事実上の財産管理
(2)任意の財産管理契約
(3)任意後見制度
(4)法定後見制度
(5)民事信託
(6)日常生活自立支援

(5)民事信託
 (信託or家族信託とも言います。ここでは「信託」と
  させていただきます)
  信託は家族の利益のために
 「①確実な財産管理」と「②柔軟な資産承継
  の2つを同時に実現する制度で、大まかに次のような
  特徴があります。
  ①財産を子供などの第三者に移転することで、
   本人において判断能力が減退した後も
裁判所や
   後見監督人等の制約を受けずに財産の管理や処分が
   できる!

  ②財産の管理は、単なる保全だけにとどまらず、
  「運用」や「活用・処分」にも使える為財産の凍結が
   無くなる!

  ③本人の財産を本人のみならず親族のためにも使えて
   相続対策も行える!

  ④財産の「承継」(遺贈)に使える!

認知症などのリスクが高くなっている高齢の親族がいる場合
においては大変柔軟で頼りがいのある制度です。

さて信託の基本的な構造について、例を用いて簡単にご説明
します。
例:不動産を所有している親(所有者・委託者・受益者)が
子供(受託者)と信託をする場合
①親が所有する収益不動産の所有権を子供に移転させる
②子供が管理&処分できる
③収益不動産からの収益は親が享受する

信託は、信頼できる人に事務処理をさせるという形で、
「形式的な財産権帰属者」=「管理者」と「実質的な利益
 享受者(受益者)」を分裂させながら、
「利益享受者(受益者)」のために「財産の安全地帯」
を作り出すことができるという特性を有します。

一見、自由度が高くなんでもできそうに思える信託…
しかし、この信託を有効活用するには、相続にあたっての
思いを明確にし、既存の制度である委任や任意後見や遺言で
も実現できないかを検討したあと、限界があれば、
信託による解決を図ることが大切です。

既存の制度による対応が困難な下記の典型的なニーズの場合
に信託の出番となります。

①財産の移転先を次だけでなく、次の次、次の次の次など、
 長期間にわたり決めておきたい場合
②特定の承継者に必要に応じてその都度財産を
 承継させたい場合
③後継となる承継者(事業の後継者など)が
 決まっていない場合
④公益的な目的(奨学金、交通遺児支援など)に
 財産を利用し社会貢献したい場合
⑤使用権・収益権・処分権のうち一部だけを移転したい場合
(収益受益権と元本受益権の分割など)
⑥割合的分割ではない質的分割(優先劣後等価値の分離※)
 をしたい場合
 ※家賃のうち50万円はお母さんに、残りは私に。
  と言った内容
⑦いったん移転した後の所有者に制約を設けたい場合
⑧財産管理や処分において判断要素を含む柔軟な対応を
 してもらいたい場合
⑨自分の死後の長期間、定期給付を行うなど
 柔軟なアレンジメントをしたい場合
⑩判断能力低下後や死後にも継続して重要な管理・運用・
 投資をしたい場合

続いて信託が持つ機能をご紹介します。
【信託の機能】
①条件付贈与機能 …様々な条件を付けて贈与することが
          できる
②財産管理機能  …所有する財産を分別管理することが
          できる
③物権の債権化機能…所有権を名義+受益権という可分債権
          にすることができる
④意思凍結機能  …所有者の意思を死後まで一定期間実現
          させることができる
⑤名義集約機能  …多数の所有者の財産を集約して
          受託者の名義に集約できる
⑥倒産隔離機能  …委託者、受託者、受益者の債権者から
          財産を隔離保全できる
⑦撤回機能    …財産を贈与した後でも撤回することが
          できる

このように多機能な分自由度が高いため、
専門家と一緒に、家族で相続にあたっての思いを明確にして
最良の信託の形を作っていくことがベストですね。

信託については以上です。

信託を検討するタイミングでプライベートカンパニーを活用
する選択肢も同時に検討の土台に上がる手段となります。
こちらにつきましては次回番外編としてご説明させて
いただきます。

ほうほう、なるほど。
「家族信託や信託という言葉は知っていたけれど…」
「我が家にはどう生かせるのだろう?」
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